2017-08

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【080】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」July 17「ルノワールと梅原龍三郎 その友情」

梅原チラシ
ルノワールと梅原龍三郎 その友情展

今回の展覧会日記では、フランスのルノワール美術館の企画展示をご紹介します。

2008年は、印象派画家ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841-1919)が、晩年を過ごしたコレット荘を、地中海に面した南仏カーニュに構えて100周年になります。現在、コレット荘はアトリエや家族の居室を活かした、美術館として公開中です。

この夏、ルノワール美術館では、コレット荘を訪れたルノワールの友人たちに焦点をあてた展覧会「ルノワールとコレット荘を訪れた親しい友人たち」を開催しております。この友人たちのうちの一人が、若き日の日本人画家 梅原龍三郎(1888-1986)です。1909年2月、梅原は単身コレット荘にルノワールを訪ね、直接師事しました。今回は2人の友情に焦点をあてた「ルノワールと梅原龍三郎 その友情展」と題した特別展示を行い、梅原の作品、ルノワールから受け取った書簡、制作風景の写真等を展示し、友情溢れる両者の交流をご覧頂きます。

ルノワールの家族と梅原の親密な関係は、次男ジャン・ルノワールの著書『我が父ルノワール』にも記されています。

私は或る日本人のことを覚えている。イタリア国境から歩いてやって来たのだ。以前巡礼に来た人からもらった小さな地図をポケットに持っていた。それを取出して私たちに見せてくれた。レ・コレットの小道も、小さなアトリエも、ルノワールの部屋も、パン焼きかまども、驢馬の小屋も、みな書きこんであった。これの訪問者のひとりは永いあいだカーニュにとどまり、非常に親しい友人となった。梅原という画家である。

会場はルノワール美術館2階の大アトリエの向かいにある、息子ピエールとジャンの部屋、及び小アトリエを使っての展示となります。見どころは1978年に梅原がルノワールの作品を模写した《パリスの審判》と、ルノワール直筆の書簡。《パリスの審判》の前に立つと、90歳にして大画面を仕上げた梅原のエネルギーには驚かされます。額縁まで塗っているのにご注目ください。また書簡はルノワール直筆のものと、モデルを務めていたガブリエルが代筆したものがありますが、いずれも梅原への親愛の情に満ちています。この他の展示室にはルノワールの作品だけではなく、アルベール・アンドレ(1874-1954)の作品、ルノワールの作品《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》に着想を得たラウル・デュフィ(1877-1953)の作品などもあるので、お時間に余裕を持ってお越しになることをお勧めします。

また2008年は梅原龍三郎生誕120年、また日仏交流150年にあたります。師弟の作品がフランスで並ぶ貴重な機会となります。多くの方のご来場をお待ち申し上げております。

開催期間:2008年6月28日 - 9月8日
開催場所:Musée Renoir Les Collettes,
Chemin des Collettes 06800 Cagnes-sur-Mer, FRANCE
開館時間:10:00-12:00, 14:00-18:00(5/2から10/31まで) 10:00-12:00, 14:00-18:00(11/1から5/1まで)
休館日:毎週火曜日, 12/25, 1/1, 5/1
入場料:大人3ユーロ, 18-26歳の学生は1.5ユーロ, 18歳以下無料

【嶋田華子】

Renoir et les familiers des Collettes
RENOIR et UMEHARA: une amitié
28 juin 2008 - 8 septembre 2008
Musée Renoir Les Collettes, Chemin des Collettes 06800 Cagnes-sur-Mer, FRANCE

Pierre-Auguste Renoir vécut à Cagnes-sur-Mer de 1903 jusqu'à son décès en 1919. De nombreux artistes lui ont rendu visite aux "Collettes", dans sa maison familiale construite au sein d'un parc d'oliviers, de 1907 à 1908.
Parmi eux, Ryuzaburo Umehara (1888-1986), peintre japonais avec qui le maître tissa une histoire d'amitié à partir de 1909. Fasciné par cette figure importante de l'histoire de l'art français, admiratif de sa technique, Umehara a eu le privilège de recevoir des leçons de Renoir et de les assimiler.
Rentré au Japon, il a appliqué ses conseils et a créé nombre d'œuvres où l'influence de Renoir est manifeste.
L'exposition vise à mettre en exergue les relations d'amitié entre les deux artistes par le prêt de souvenirs, pièces d'archives, photographies, lettres, ainsi que les relations "artistiques" par le prêt de tableaux réalisés par Umehara et par Renoir, qui seront mis en parallèle.
En outre, ce projet s'inscrit dans l'année des célébrations du centenaire de l'installation définitive de Renoir et sa famille aux Collettes en 1908, ainsi que dans la célébration de l'amitié entre Renoir et Umehara.

Ouvert de 10h à 12h et de 14h à 18h (du 02/05 au 31/10) , 10h-12h et 14h-17h (du 01/11 au 01/05).
Fermé le mardi le 25/12, 01/01 et 01/05
Tarifs du Musée : 3€, Etudiants 18 / 26 ans : 1.50€, - de 18 ans : gratuit.
Avec l'aimable concours de: L'ambassade du Japon, La Galerie Nichido,
Ishibashi Foundation, Japan International Cultural Exchange Foundation,
The Japan Foundation, Le Yomiuri Shimbun.

par Hanako Shimada

【追記】
展覧会の終了が9/8から10/6に変更となりました。
なお9/8より一部展示替えがございます。

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【079】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」June 9「薔薇空間」


薔薇空間-L'espace rose-展

宮廷画家ルドゥーテとバラに魅せられた人々と題して、渋谷のBunkamuraザミュージアムにて6月15日まで開催中です。
詳しくは公式HPへ。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/08_rose/index.html

展覧会の初日、地下の美術館の入り口に向かおうとエスカレーターに乗ったところ、眼下に薔薇のプランターが飛び込んできました。ドゥマゴパリのテラスですが、今まさに開いたばかりの瑞々しい薔薇が沢山揃っており華やかな雰囲気。

この展覧会は「薔薇空間」と題するだけあって、見事に薔薇尽くし。フランス革命前後に活躍した宮廷画家ルドゥーテの『バラ図譜』169点全てが展示されています。

兄の工房で装飾画家をしていたルドゥーテは、植物学者のレリティエと出会ったことがきっかけで植物画の道に入り、マリー・アントワネットや、ナポレオン皇妃ジョゼフィーヌに仕えることになります。
ジョゼフィーヌが集めた珍しい薔薇の品種を記録するため、ルドゥーテが8年の歳月をかけて制作したこの『薔薇図譜』ですが、イギリスで身につけたスティップル・エングレーヴィング(stipple engraving 点刻彫版法)という点の集合で陰影を表現する技法を用いているそうです。
このため輪郭線がなく、淡いグラデーションの表現が可能になったとか。
植物画の目的は、その植物の色や形態を正確に記録することですが、ルドゥーテの作品は正確無比な描写だけではなく、蕾のふくらみや花首の傾きの表情が実に豊かで、まさに薔薇の肖像画といった趣、図鑑の域を超えています。

 
会場ではまず入口で作品リストを入手。
素敵な薔薇の表紙のリーフレットに挟まれており、気分が盛り上がります。展示室に足を踏み入れると薔薇の香りが!なんと薔薇の芳香を漂わせてあります。

作品は品種、系統ごとに展示されており、後述の壁面の色分けの効果もあって、その違いが良く分かります。
古代種にはじまる展示はガリカ系、ダマスク系、アルバ系、ケンィフォリア系、モス系と並び、オールドローズ種も同様にチャイナ系など各系統が並び、薔薇と一言で括れない豊かな世界が広がっています。
中でもマリー・アントワネットが肖像画で手にしているケンティフォリア系の薔薇の、花びらが幾重にも重なった豪華な姿は見飽きません。

中でも興味深いのは「花の中から突き出て二番目の花が咲くバラ」です。
栽培の過程で偶然できたもののようですが、これを新種としてル・ドゥーテは絵に残しています。
花の中から葉が出ているロサ・ガリカ・アガタ・プロリフェラ、花の中にもうひとつ花があるロサ・ダマスケーナ・セルシアナ・プロリフェラと、ロサ・ケンティフォリア・プロリフェラ・フォリアケアの3つの図版、お見逃しなく!

会場の後半にはイギリスの風景画家、アルフレッド・パーソンズによる植物図譜『バラ属』の図版、二口善雄氏の水彩画、齋門富士男氏撮影の写真が展示され、様々な薔薇の表情を楽しめます。

さて会場装飾ですが壁面はピンクと白で構成され、普段も使われている黒いソファはピンクのシートで包まれて、室内がピンクのハーモニーになっています。
一部屋ごとにこの壁面の色調は異なり、濃いピンクや淡いグリーン、柔らかなブルー、イエローなどが作品に併せて配されています。
シンプルな額縁を連ねたリズミカルな展示と相まって居心地の良い空間となっています。

また美術館と言えば静かな場所というイメージですが、今回はクラシック音楽が会場に流れ、視覚、嗅覚、聴覚で味わえる素敵な展覧会です。

驚いたのはCGのインスタレーション。
ル・ドゥーテの作品をモチーフにした「ロサ・ケンティフォリア開花」という3DのCGムービーが会場で上映されています。
作品の中の薔薇を回転させながら、蕾の開花から枯れるまでをCGにしているのですが、この技術が素晴らしく思わず見入ってしまいます。
CGの画面が図版と同じ額縁に縁どられているのもお洒落です。

気になる図録ですが、手にとって嬉しいのは、表裏表紙とも見返しにまで絵が配されていること。
伸びやかな薔薇の絵が配されており、思わず本棚に飾っておきたくなります。
図録1
図録2
図録3


ミュージアムショップも大充実。まず目に入るのは壁面に並ぶ色とりどりの絵柄が配されたエコバック、どれにしようか迷ってしまいます。ルドゥーテの作品をモチーフにしたアイテムとしてはお馴染みの絵葉書、一筆箋(縦書き、横書きともあります!)、レターセット、カードにクリアファイルなどが揃っています。私のお勧めは小型のクリアファイル。蓋がついており、チケットや領収書など細々したものを整理するのにぴったりです。
文具1
文具2
文具3

ポーチやエプロンなどのファブリック類、食器などまで揃っています。ハンドタオルやハンカチひとつとっても、ル・ドゥーテの作品の薔薇の繊細な表情が再現されており本格的。使うのがもったいないほどです。
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ギャラリートーク等の関連イベントをはじめ、レストランではタイアップメニューが出るなど、会場内外で楽しめるこの展覧会、ランチを兼ねた休日のお出かけにお勧めします。

【嶋田華子】

【078】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」March 29「アーティスト・ファイル」



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●アーティスト・ファイル展

公式HP
http://www.nact.jp/exhibition_special/2007/artistfile2008/index.html

国立新美術館で始まったアーティスト・ファイル。同時代に生きる作家の紹介と研究の蓄積を目指す新美術館の自主企画展です。グループ展といっても今回選なれた8人の作家の作品が一堂に会するのではなく、それぞれ独立した展示室が用意されており、各々その作家独自の世界が作り上げられています。

例えば、さわひらきの部屋。安全のため入場制限をしていますが、これは順番待ちをしても是非観ておきたい部屋です。暗闇に浮かびあがる6面のビデオ・プロジェクション。繰り返される映像を見ていると展示室外の時間軸から切り離され、吸い込まれるような、ゆらゆらと作品世界に入りこんでいくような錯覚に襲われます。その前室のパパペトルーの硬質な明るさとは違う空気、時の流れに身を委ね、座り込んで鑑賞するもよし、作品と対峙することで自らの記憶を遡るような感覚を味わえます。

今回の展示は旬の作家の展示室が次々に立ち現われ、写真・ドローイング・映像・インスタレーションと各々手法は違うものの、今という時代を体感できます。決して寄せ集めではなく、それぞれの物語が緩やかに共鳴し合ってひとつのハーモニーがあり、自分の周囲の空間が一回り大きくなったような豊かな時間が過ごせました。これからの美術動向を展望するという意味で、今後も定点観測したい企画ですね。

また出口ではカタログが販売されているのですが、8人の作家一人一人が別冊になっている、豪華な図録なので、こちらのチェックもお忘れなく!それぞれの作家ファイルにはカラー図版だけではなく、活動歴などが整理され、資料価値も高いものです。得てして現代作家の情報はギャラリーに所属していなかったり、研究者がいないと散逸しがちなので、編集された学芸の方の御苦労がしのばれます。事後にドキュメントも出版されるようなので、こちらも貴重な記録になりそうです。

この他、今回の展示はアーティスト・トークやワークショップなど関連イベントが色々予定されているので、まずは公式HPをチェックしてからお出かけになることをお勧めします。

【追記】
artistfile.jpg

先の展覧会日記で「記録集が出版されるらしい」と書きましたが、完成版を入手したのでご紹介します。
写真は安齋重男氏。展覧会が組み立てられていく過程と、完成した展示室の双方の写真が収録されています。冊子には最終版の出品リストが掲載されており、写真と併せて今回の企画の全容を概観できます。いずれも一回限りのインスタレーションの姿を知ることができる貴重な資料ですよね。先にご紹介した8冊組のカタログと同じBOXに収納できます。展覧会は5月6日まで。GWのお出かけスポットの候補にどうぞ。

【嶋田華子】

【077】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」March 29「通路展」


通路展/MOTアニュアル

●通路展

公式HP
http://www.kawamata.mot-art-museum.jp/walkway/index.html

こんな展覧会って初めて!と驚きました。
清澄白河駅から東京都現代美術館へ向かって歩き、最初に目に飛び込んできたのは、美術館前のバス停の背後に立ち並ぶベニヤ板で作られた通路。辿っていくと美術館の中へとつながっていきます。美術館の入口からチケット売り場、展示室の入口まで断続的に連なる通路を歩きながら、あぁ美術館は「通路」なんだと体感できます。

はじめもなければ終わりもない、美術館の展示によくある動線の設計などもされておらず、自由に歩きまわれる。通路の合間には制作中のラボあり、ワークショップあり、カフェスペースあり、と様々な「動いている人」に触れることができます。私も「週刊 電球」を手にとって見たり、早速Wahラボの「地面の中に家がある」プロジェクトに拙い案を出してきました。通路の左右に展示される川俣正の過去30年にわたるプロジェクトを辿ると、その「蓄積」もまたプロセスにあることを感じ、また何よりも美術館という場が新しい人、もの、価値観との「出会いの場」であることを実感できます。イベントやトークも色々と予定されており、偶発的なものもあり、まさに日々動いている企画です。

リアルタイムで会場の様子が伝わっている【通路】ブログも必見です。
http://kawamata08.exblog.jp/

横浜トリエンナーレも楽しみですね!

なお、常設展示室では6/29まで岡本太郎『明日の神話』が公開中です。
http://www.1101.com/asunoshinwa/
縦5.5M 横30Mの壁画の前に立つと、画面が飛び出してくるような、包み込まれるような、その迫力に飲まれます。メキシコでの再発見や修復の過程、日本への返還などがまとめられた映像コーナーもあり、全室と併せて岡本太郎ワールドが展開しています。

若手作家のグループ展「MOTアニュアル2008」も充実しているので、東京都現代美術館へお出かけの時は、時間に余裕をもっていらっしゃることをお勧めします。1999年にスタートしたMOTアニュアルですが、今年は「解きほぐすとき」をテーマに、5人の作家が紹介されています。作家によって「解きほぐす」対象は様々ですが、中でも私が興味をひかれたのは手塚愛子氏の作品。布の繊維を解きほぐすことで布そのものの構造、布の織られた時間などが浮かび上がっています。ほぐした糸を使った刺繍、ほぐし緩やかに束ねられた糸、作家の手を感じる作品の数々を前に、何をほぐして、何を織り直したのか、その思考を辿ることができます。同じ糸を使いながらも、左右で違う文様を織り分けている作品も、解きほぐした次のステップが見られ興味深いものでした。この展示は4/13まで、お花見を兼ねて訪れるのに最適です。

【嶋田華子】

【066】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」July 13「青山二郎の眼」

「青山二郎の眼」展

IMG_0684.jpg IMG_0685.jpg 世田谷美術館で開催中の「青山二郎の眼」展。
昨年秋にMIHOミュージアムで開幕し、愛媛県美術館、新潟市美術館と巡回していよいよ東京へ。

世田谷美術館HP
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
exhibition/exhibition.html

読売新聞社HP
http://info.yomiuri.co.jp/event
/01001/200702053407-1.htm


知っているようで実は良く分からない、というのが「青山二郎」という人物ではないでしょうか。骨董好きだからコレクター、或いは美術評論家ともいえるし、生涯に2000冊近い書籍の装幀を手掛けたことから装幀家ともいえるでしょう。しかし青山は生涯職業を持たず、「高等遊民」の姿勢を貫いたこと、しかしその「余技」がひとつの文化潮流になるほど高い水準にあったことが、この展覧会で浮き彫りになっています。白州正子が評するところの「何者でもない人生」であり、加藤唐九郎が言うところの「やろうと思えば何でもやれた天才なのにわざとなにもしなかった男」の生き様を知ることができます。

本展は4章立てになっており、第1章 鑑賞陶器?中国古陶磁、第2章 朝鮮考?李朝・朝鮮工芸、第3章 日本の骨董、第4章 装幀家 青山二郎とその交流と構成されています。青山二郎の美の全体像に迫ろうとする企画だけあって、青山が関わった古陶器の図録に掲載された作品、企画した展覧会に出品された作品が集められる他、手がけた書物の装丁や交流にいたる隅々まで目配りされています。
 14歳で骨董に目覚め、やがて骨董の専門家やコレクターに広く知られるようになった青山の展覧会だけあって、第1章から3章までは名品が並びます。日本民藝館所蔵の呉州赤絵が数点出品されており、色鮮やかな赤が目を引きます。また小説家の大岡昇平が後に「青山学院」と名付けたように、青山二郎の元には、文芸評論家の小林秀雄、河上徹太郎、小説家の永井龍雄、詩人の中原中也、随筆家の白洲正子らが集い文学論や骨董談義に花を咲かせていました。第4章では青山が手がけた、この文学サロンに出入りしていた作家の書物の装幀を見ることができます。青山の代表作である中原中也の『在りし日の歌』の装幀も展観されています。

書物の装幀も魅力的ですが、私が一番心惹かれたのは青山自身が文庫本を彩色したドエトフスキーの著作4冊。『罪と罰』(新潮文庫)、『白痴』(同)、『地下生活者の手記』(岩波文庫)、『未成年』(同)は、それぞれカバーが外され、直接水彩で模様が描かれているのですが、どれも繊細で愛らしく、見慣れているはずの文庫本が青山の手に掛かると実に魅力的に変貌を遂げるのに驚きました。
 意外だったのは青山が描いた油絵(板絵も含む)です。「私の画には曖昧な処がないと言つてもいい」(『素人画について』より)と本人も述べていますが、明快な青さが印象的です。

第4章の交友コーナーでは、洋画家の梅原龍三郎、陶芸家の浜田庄司、河井寛次郎、北大路魯山人らの作品が展示されています。今回は「青山二郎の眼」という展覧会タイトルですが、青山と彼らの関わりや、今だからこそ検証できる青山の同時代の作家に対する評価など、興味深いコーナーになっています。鉄斎の画、バーナード・リーチの香炉、黒田辰秋の漆器、、、。会場を一巡すると昭和の芸術において、青山二郎とその周辺はひとつの潮流となっていたことが伝わってきます。

例えば梅原龍三郎。梅原芸術と呼ばれるものは豪華絢爛、豪放磊落と形容されるように、華やかで重厚なイメージがあります。しかし青山は梅原の作品群に、副産物として生まれている「別に図案風な即興的な一連の諸作がある事に注意しなければなりません。」と、注意を喚起しています。「私はこの種の作品を梅原さんの「大津絵」と称んでゐますが、梅原さんの「大津絵」も昔の大津絵と同じ事で、画筆のたこから生まれた記念碑です。」と青山が述べるように、展示されている『梅原龍三郎小品画集』は素朴な即興的な絵が収録されています。梅原は大津絵や初期肉筆浮世絵に強い関心を持って蒐集し、自らの制作の糧にしており、これらの小品に目を向けた青山の眼の鋭さには驚かされます。
 この他『裸婦豹図』は梅原が描いた絵を元に、富本憲吉が陶板に仕上げた作品ですが、青山の周辺の人物同士の交友が伺われるのも興味深いところです。表紙カットを梅原が描き、装丁は青山二郎が担当した季刊「創元」の第一号も展示されています。内容は青山二郎の梅原論や、中原中也の未発表の詩、小林秀雄の「モツアルト」など、青山とその周辺の人々のコラボレーションといった趣です。

さて今回の図録は2冊組。図版編と解説編に分かれています。ざらりとした灰色の外箱の手触り、箱の内側は艶やかな黒に山月蒔絵文庫(本阿弥光悦作)がプリントされ、凝った作りになっています。背表紙は黒が配されていますが、冊子を引き出すと印象的な赤と青の表紙が目に飛び込んできます。まるで青山が愛した呉州赤絵のように、ソーダ釉のトルコブルーのように鮮やか。こうしたギャップの面白さは、実際に手にとってみないと伝わってこないものですから、ミュージアムショップではお見逃しなく!
IMG_0736.jpg IMG_0737.jpg


締めくくりに、図版編の最後のページに収録されている青山二郎の言葉をご紹介しましょう。

優れた画家が、美を描いたことはない。
優れた詩人が、美を歌つたことはない。
それは描くものではなく、
歌ひ得るものでもない。
美とは、それをみた者の発見である。
創作である。
『日本の陶器』より

まさに稀代の目利きとしての自負が感じられます。
会期は8月19日まで。緑豊かな砧公園に納涼がてらお出かけになるにもぴったりの展覧会だと思います。

【嶋田華子】

【065】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」July 03「スキン+ボーンズ」

「スキン+ボーンズ 1980年代以降の建築とファッション」

国立新美術館で開催中の建築とファッションをテーマにした展覧会。
http://www.nact.jp/
exhibition_special/2007/skin_and_bones/index.html


アートシンクタンク通信をご愛読の皆様にはお馴染みの五十嵐太郎先生が監修された企画。また京都服飾研究財団の深井晃子先生も監修に入っていらっしゃいます。現代の建築とファッションに共通する特徴を、思想やテクニックなどに見出し、視覚的に検証するという内容です。

元々はロサンゼルス現代美術館で開催された展覧会ですが、巡回にあたっては日本人作家などが充実した企画になりました。約270点とボリューム感たっぷりの展示なので、映像なども全部観るには時間に余裕を持ってお出掛けになることをお勧めします。

また日頃は何気なく眼にしている建築も、美術館でパネルになっていると、計算され尽くした繊細な表情を見せるにのに驚かされました。まさに「異化」効果を実感。

さて今回注目する点のひとつとして展示方法が挙げられるのではないでしょうか。360度美しく見えるようにボディに着付けたり、ライティングを調整したりと、ファッションの場合は絵画の展示とは違った会場設営の難しさがありますよね。アパレルショップの商品ではなく、ミュージアムピースとして見せる、ということにも心配りされていて勉強になりました。

会期は8月13日まで。展覧会の入場券(半券)を持っているとBunkamuraル・シネマで上映中の映画「スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー」が割引で入場できるそうなので、こちらもお見逃しなく!

【嶋田華子】

【064】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」June 26「パルマ‐イタリア美術、もうひとつの都」

「パルマ‐イタリア美術、もうひとつの都」展

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国立西洋美術館で開催中のパルマ展。
http://www.parma2007.jp/


ターミナル駅で一斉に広告展開しているので、ポスターを目にされた方も多いのではないでしょうか。 パルマといえば生ハム(!)や、パルミジャーノ・レッジャーノ(パルメザンチーズ)が思い浮かびますが、美の都としても長い歴史があります。今回はルマ国立美術館をはじめ、教会や聖堂から集められた16世紀の作品やバロック絵画を中心に構成されています。メダルやフレスコ画の断片、タイル、写本、素描と盛りだくさん内容。

チラシに使われた『聖母子と幼い洗礼者聖ヨハネ、聖エリザベツ、マグダラのマリア』も印象的な作品ですが、 お勧めはニッコロ・デッラバーデの『ラクダとユニコーン』。この展覧会では、動物がモチーフの絵画はこの作品のみになります。

またファルネーゼ家の公爵たちの肖像画では、華麗な服飾に眼を奪われます。16世紀中頃から現われ始めた襞襟は、カタログに拡大された図版が収録されていますが、やはり会場でじっくり観たいもの。この襟は麻や紗などの薄い布を、木の棒などで8の字になるように襞をつけて畳まれているのですが、質感が見事に描き現されていて溜息が出てしまいます。襟だけではなく勲章や刺繍、アクセサリーも精緻に描かれているので、服飾に注目して鑑賞するのも良いかもしれません。

会期は8月26日までなので、改めてゆっくり観に行きたいですね。
音声ガイドのナレーションは錦織健さん。番外編も収録されていますのでこちらもお楽しみに。

【嶋田華子】


【063】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」June 18「ルオーとグロテスク」

「ルオーとグロテスク」展

松下電工汐留ミュージアムで開催中のルオーの展覧会。
http://www.mew.co.jp/corp/museum/
exhibition/07/070526/

 こちらの美術館はオープン以来、所蔵のジョルジュ・ルオー(1871-1958)の作品と、生活文化をテーマにした企画展を開催しています。前回のジャポニスムのテーブルウエア展も繊細で素敵でしたし、昨年の富本憲吉展や重森三玲展も親密な空間作りに成功していて興味深く思いました。さて、今回はコレクションの中核をなすルオー作品と出光美術館からの出品で構成され、初期から晩年までのルオーの代表作を観ることができました。
 内覧会では監修の後藤先生より、この企画は「ルオーとプリミティズム」や「ルオーとソヴァージュ」といったテーマを当初は考えられていたというエピソードのご紹介がありました。テーマが二転三転したものの、以下の4つの章立てを決めたら、あっという間に出品作の分類が出来たというお話でした。その4つのカテゴリとは、滑稽と恐怖、善と悪、美と醜、聖と俗なのですが、今までにない展示構成、相反する要素を兼ね備えた作品の魅力に気づかされ、新鮮な印象を受けました。
 今回の展覧会のカタログは版型が正方形と珍しく、また切り取ると栞になるページがあるなど、素敵な仕上がりなのに感心しました。特にポストカードが挟み込まれたページは、この工夫によってルオーが拘った額縁の魅力にも気づかされました。
 またライティングが凝った展示なので、会場の雰囲気もゆっくり楽しみたいところです。
 今後は7月28日には「20世紀音楽におけるグロテスク」というコンサートや、8月4日には監修の後藤新冶先生によるギャラリー・トークも予定されているとのこと。会期は8月19日までなので何度も足を運びたいと思っています。
【嶋田華子】

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