2006-03

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【032】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.30

今週は3月11日に横浜で行われたにっぽんmuseum企画協力のイヴェント《建築はお菓子である~パティシエ界のパラディオ、A.カレームを読む~》についてご報告します。
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3月11日の夕刻、「食と現代美術part2- 美食同源」展(BankART1929)関連プログラム《建築はお菓子である~パティシエ界のパラディオ、A.カレームを読む~》が催されました。
今回、朗読会の会場となったのは同展内 大橋渉作≪パンな気分≫、
池田雪絵+斉藤理≪dessert d'archi 建築をかじってみよう≫の展示会場でもあるカフェ、HANA-YA。

少々遅ればせながら、当日の様子をレポートいたします。


夜のHANA-YA


碧く暮れゆく馬車道通りに、橙色の明かりを灯したHANA-YA。
扉を開けると、温かく心地よい空気に包まれます。

ちょうど日が沈み終わった頃、朗読者の杉並勢津子さんを囲み、
参加者のみなさんは各々お好みの位置にご着席。
イアン・ケリー著『宮廷料理人アントナン・カレーム』 (村上彩訳・ランダムハウス講談社・2005/Ian Kelly, "Cooking for Kings", 2003)からのエピソード が繰り広げられます。


朗読風景


優しく、親しみ深い杉並さんの語り口。
聞き入るうちに「パティシエ界のパラディオ」A.カレームの世界にトリップしてしまいそうに。
目を瞑ればそのお料理の情景が浮かぶほど、臨場感溢れる雰囲気が肌に感じられます。

キッチンからは、調理具の摩擦音さえ聞こえてくるような・・・!?

いえいえ、それは気のせいではありません。
そうです、カフェ内キッチンスペースにてスタッフが用意しているのはカレームのレシピによるお菓子。

カレームが残したレシピの中から、1829年、パリ・ロスチャイルドの邸で、紀行作家レディ・モルガンに供したという 「ネクタリンのプロンピエール」を再現したもの。

耳で朗読を堪能したのちは、舌で建築を味わっていただきます。
目でも楽しめるこのお菓子。


HANA-YAプロンピエール

中央オレンジ色のクリームがプロンピエール。
白いウェハースとの対比でHANA-YAの外観を表現。


口の中には上品な甘さが広がり、先程耳から得た情報を体現してくれます。

建築って、難しい??などと、素人の私は思い込みがちですが、
耳で、肌で、目で、舌で楽しめる建築体験に、すっかり親しみを感じてしまったのでした。
実際の建築物に触れることへの興味も、触発されてしまいます。

4月以降は、「朗読で楽しむ美術書講座」が開講されます。
みなさまもご一緒に、“感覚の芸術体験”いかがですか?(編集局/中村)

スイーツ

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【031】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.23

今週も2月末に中国を旅行してきた当メルマガ編集長天内が、上海美術館
と上海当代美術館をご紹介します。

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上海美術館は1956年に創設され,近年(99年以降でしょう)人民公園内にある元上海レースクラブの建物(1933竣工.その後上海図書館旧館として使われた)に移りました.

少し話題をずらしますが,日本では用途と建物の設計とが固定的な関係にあって,用途が変わったときには建物ごと更新する必要がある,との観念があるのか,あるいは改造よりも改築の方が安上がりと考えられているのか,いずれにせよ古い建物が残りにくいです.これに対し,少なくとも私が訪れた上海や青島では,古い建物をそのまま別の用途に利用しているケースが多いです.
 たとえば1918 Art Space(現在はこれも先週ご紹介した蘇州河の畔,ただしM50ではなく地下鉄漢中路駅から,漢中路の続きの橋を渡ったところに移りました)は以前旧フランス租界・香山路にありましたが,一棟のフランス邸宅の中に数家族が暮らしている中の一室でした.つまり邸宅が集合住宅に転用され,一部が画廊に転用されていたのです.

上海vol3-1

上海vol3-2


青島市でもドイツ租界時代の住宅がそのまま公官庁に転用されている例を見ました.建物自体は残りながら,内部でのアクティヴィティは時代ごとに転々としているのですね.写真にある塔付きの瀟洒な建物【写真1,2枚目】はイギリス人の競馬クラブ,図書館,上海美術館と転用されてきたことになります.上海の建築については木之内誠編著『上海歴史ガイドマップ』が詳細に教えてくれます.

さて上海美術館ではアーティスト陳箴の回顧展が開かれていました(2/25-3/18).1955年上海生まれ,残念ながら2000年にパリで亡くなってしまいました.1985年以降フランスで内臓と太鼓という面白い類比(「太鼓腹」?)を元にした,巨大な太鼓インスタレーション(ベッドも椅子も皮を張られ太鼓になってしまいます)と太鼓パフォーマンスといった楽しげな印象もあります.このインスタレーションは家具の集積という点で,川俣正さんを想起させましたが,もちろん動機は違うところにあるでしょう.
 しかし私がもっとも興味を引かれたのは,《社会調査──上海》という1997年の作品(いくつもの上海の都市風景がパネルになった作品です)でした.詳しく立ち入る余裕はありませんが,日本と中国に共通する東洋と西洋という問題系,グローバリゼーションに急激に傾斜する上海の中での歴史地区の保存への視点などが書き込まれたものでした.

上海美術館では他にも自然にインスパイアされた陳天龍の油画展(2/23-3/3;会期は短いのに点数はかなりあった),20世紀の近代芸術運動にわずかずつ言及した展示などがあり,広大な床面積をフルに使って展示されていました(食傷気味というか,疲れてしまいました).陳箴のカタログを買って休憩に訪れたのは,上海美術館の出口ホール(建物中央にある入口ホールではなく北側のはじっこ,時計塔の真下にあります)からエレヴェータで最上階に上がり,さらに階段を登った屋上にあるKathleen's 5というお店.レストラン&バーという位置づけですが,ランチから営業しています.

上海vol3-3


アクリル板で覆われた温室のような「グラス・アトリウム」の中にあり,上を見上げればアクリル板に溜まった雨水ごしに時計塔が聳え(写真3枚目),周囲の人民公園や国際賓館などが望めます.他にも最上階の「オレンジ・インテリア」,晴れて暖かければ開放されていたはずの「ガーデン・テラス」などのぜいたくな空間が用意されています.ディナーで行ってもかなりきれいな空間になるのではないでしょうか(私はランチで行ったので解りませんが).

近くには上海当代芸術館などもありましたが,そこでのお話はまた別の機会に…….(編集局/天内)

上海美術館 http://www.cnarts.net/shanghaiart/
1918 Art Space http://www.1918artspace.com/
Kathleen's 5 http://www.kathleen5.com

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【030】活動レポート 公開録音「アートの鍵 五十嵐太郎編」 in foo

3月19日(日)、東麻布の「foo」を会場にトークイベント「アートの鍵 五十嵐太郎編」が行われ、多くの方々に御参加いただきました。お越しいただき有難うございました。当日の様子を写真とともにご紹介します。
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天内編集長の司会により、トークイベントがスタート。
第2回公開録音ブログ1



五十嵐さんのトークが始まり、来場者の方々は真剣に耳を傾ける。
今回のキーワードは「斜線」と「バロック」。

第2回公開録音ブログ2



会場ではにっぽんmuseum副理事長斉藤理さんによるル・コルビュジエの建築をモチーフとしたお菓子が振舞われた。中段の透明ゼリーの中には、ル・コルビュジエが手掛けた多彩色の作品をイメージし、様々な色のゼリーの粒が配されているという非常に凝った作り。それをスポンジが挟み、ドミノシステムの完成。
第2回公開録音ブログ3



会場を暗くして、懐中電灯でお菓子を照らす。すると色のついた光が透過し、会場が沸く。この建築お菓子を実際に作る講座が6月よりにっぽんmuseumで始まります。
第2回公開録音ブログ4



お菓子を食して今回のイベントは終了。皆様お楽しみ頂けたでしょうか。
第2回公開録音ブログ5


(編集局/川野)

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【029】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.16

先週に引き続き、今週の展覧会日記も2月末に中国を旅行してきた当メルマガ編集長天内が、上海駅のそばにある、もと紡績工場だった区画をご紹介します。現在ではギャラリーやアトリエが集中しており、ちょっとした名所です。
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LEJmar16

上海駅から天目西路,蘇州河を渡ってすぐを川沿いに右に向かい,しばらく歩くと,莫干山路(Moganshan Lu)というごく地味な道があります.辺りはもともと工場と工員の集合住宅が固まっていた地域でした.莫干山路50号ももとは綿の紡績工場でした.ところが2002年に,上海市はこの辺りを芸術工廠園(Art Industrial Park)に指定しました.その入り口に当たる莫干山路50号(M50:写真)の中には,にわかに国内外のアーティストのアトリエや関連産業,画廊,映画スタジオ,デザイン研究所などが集結し,まだ上海市民の誰もが知っているとは言えないこの道路に,頻繁にタクシーが客を乗せてきたり,空のタクシーが呼ばれてきたりする活況が訪れることになりました.公共交通はまだそれほど整備されていませんので,特にお帰りの際はお気をつけ下さい(画廊に頼んで電話をしてもらう,などが可能です.画廊の方は中国語と英語なら大抵大丈夫でしょう).
 上海市の計画では,1930年代の創業時のものを含め旧来の建物を残しつつ,川沿いの親水公園としての整備を図り(観光客が蘇州河に沿ってヨットなどで訪れることも計画しています! どこから?),芸術・工芸・観光の一大拠点を作る計画のようです.すでに今も,上海の有力ギャラリーが集結しています.たとえば,昔のフランス租界にある復興公園内の洋館(フランス人クラブでした)でレストランと建物を共用していた画廊「ShanghART」は,M50に移転してからは2つの建物を用いて,非常にゆったりと展示ができるようになりました.また同じく旧フランス租界にある「Art Scene China」は一軒家を改装したスペースですが,M50に新たに「Art Scene Warehouse」を設け,広大な展示スペースとして用い,もとの「China」の方は商談と小品の展示に使うようになりました(しかしこの「China」も,上海のアートシーンの地理的な中心から外れてしまったので,移転する予定のようです).ちなみにShanghArtはスイス人,Art Scene...はカナダ人の経営です.倉庫や作業所だった広大な建物ばかりで,とくにShanghARTが別棟に設けた展示スペース「H Space」の屋根には穴が空いているので,中央を大きく開けて壁面に作品を掛けるだけの,贅沢な空間の使い方になっています.もちろん,将来的には直す予定でしょう.
 面白いことに,上海市は明らかにニューヨークのソーホー地区を意識しています(下記の莫干山路50号のHPのトップには大きくSOHOの文字が出てきて,二つのOの一方をクリックすると英語か中国語のページが出てくるのです).NYの場合はアーティストの自発的な場所探しがソーホー地区の倉庫街にたどり着いたという経緯でしたが,上海の場合は市政府が誘導して集中効果を狙っているのです.M50にいらっしゃる中でも「禾山芸術」の方が日本語をお話しになったので,かなり深い話をしてきましたが,彼のお話は市政府の誘導とか財閥の思惑など,芸術活動の枠組みや動機に関する問題はとりあえず不問にして,障害となる規制に固執しがちな政府を突き上げて規制を外させた上で,日本も中国も関係なくみんなでひたすら突っ走ろう,というものでした.この方一人の個性かも知れませんが,熱い雰囲気に圧倒される会話でした.彼らがアートのどんな力を信じて突っ走っているのか(決してお金だけではないけど,お金もその一部でしょう),これからも中国のアートシーンに大注目です.(編集局/天内)

莫干山路50号 http://www.m50.com.cn
ShanghART http://www.shanghartgalleru.com
Art Scene China http://www.artscenechina.com
Art Scene Warehouse http://www.artscenewarehouse.com
禾山芸術 http://www.heshanarts.com

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【027】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.9

今週は2月末に中国を旅行してきた当メルマガ編集長天内による、上海郊外のショッピングモールの中に作られた現代美術館と、建設中の芸術ホテルについてのレポートです。

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上海2

中国で第2の,そしておそらくはもっとも国際的で都会的であることを自任する都市です.2010年には上海万博を控え(2008年は北京五輪なので,この2年間で中国の2大都市の基盤整備をある程度終えたいところでしょう),政府は中国独特の慣習を国際基準に合わせていこうと躍起のようです.市民がそれにどれほど従っているかはかなり怪しいですが…….そのような訳で,ご存知のとおり上海は建設ラッシュです.つねにそこかしこで工事が行われていることは,東京の比ではありません.ガイドブックを見ても,情報の鮮度がすぐ落ちてしまうので,ぜひ最新のものをお買い求め下さい.そのなかで,今日はできたてほやほやの現代美術館をご紹介します.
ここにあげた写真は上海の東側を流れる黄浦江の東=浦東地域にある,「証大大拇指広場」というショッピングモールです.正面になぜか親指の形をしたブロンズのオブジェがおかれています.証大というのは不動産デヴェロッパの名前で,各種レストラン,画廊,カルフール(フランスに本拠があるスーパーマーケットチェーン)などが揃っています.近辺は巨大なスケールで開発が進行しているニュータウンで,このショッピングモール自体が最近できたようです.この写真のいちばん左側に,黄色と黒の看板があるのがお分かりでしょうか? これが,ショッピングモールの中にある上海証大現代美術館です.入り口には,ショッピングモールにあった親指の彫刻があります.
同館は2005年6月に開館して,これまでにメディア•アートの展示などを行ってきましたが,私が訪れた2006年2月24日には絵画の展示をしていました(新絵画の興起:2005中国当代絵画展).おそらく2000㎡以上ある3層の展示スペースをフルに使って,最新の絵画を一堂に集めていました(つい3ヶ月前の2005年12月の作品も含まれていました).また同館内には中央美術学院という北京の芸術学校(日本の芸大に近い位置づけではないかと思います)の,アートマネジメントコースのセンタが併置されています.あまり頻繁に使っている形跡はありませんでしたが…….平日午後早めの時間だったので,誰も他に訪れている人はいませんでした.
集められた絵画は──これは中国の現代美術全般に言える傾向だと思いますが──中国の変貌しつつある都市環境やそれを支える社会環境に,ダイレクトに反応した作品が多いように思います.商業主義やファッションやポルノグラフィの流入,従来の共産党主導の価値観の衰退(骸骨のパンダ:高瑀《一万年》),軍事的衝突の予感?(なんと想像上の戦火の尖閣諸島に軍隊が向かうところがモノトーンで描かれた絵画までありました:石心宇,タイトルは《釣魚島》だったか,定かではありません)などなど,ある意味で解りやすい現代アートが並んでいるとも言えます.
このショッピングモールが面している芳甸路の反対側も,また建設現場です.ここには証大芸術ホテルが2009年に完成する予定だとか(後から知りましたが,磯崎新さん設計だそうです).日本の美術館のような鑑賞環境はほとんど望めません(寒かった……作品保護の観点からもあまりよくないはずです)が,もしかしたら,完成の暁には現代美術館もそちらに移転するかも知れません.鮮度のよさという点だけでも,この美術館を訪れる価値がありそうです.(編集局/天内)

上海証大現代美術館
芳甸路199弄28号 証大大拇指広場内 http://www.zendaiart.com/
地下鉄2号線•上海科技館駅からタクシーが便利です.

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【026】展覧会日記 Mar.8 臨時号

3月11日 (土) に行われるイベント《建築はお菓子である~
パティシエ界のパラディオ、A.カレームを読む~》の会場
カフェHANA-YAにて行われている展覧会をレポートします。
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   横浜・馬車道通り、関内から横浜港に通じるこの数百メートルの通りを道形に歩き、海岸通りを右折すると、白と黄色の色彩をまとい、来る人を温かい表情で迎える一軒の小さなカフェ、HANA-YAが見える。2月24日から始まった「食と現代美術part2- 美食同源」(横浜BankART)展に出品している大橋渉 、池田雪絵+斉藤理の作品展示会場だ。本業を建築関連とする彼らが食材でいったいどの様なアートを紡ぎ出したのか…と逸る気持ちを抑えつつ、先ずは馬車道界隈を散歩してみよう。

   馬車道駅6番出口の階段を駆け上がりそのまま本町通りと馬車道通りが交差する本町四丁目交差点に臨む。正面には粗く削り出された石積みと滑らかに磨かれた円柱との対比が印象的な旧富士銀行が、右手には細長い三角形をした敷地の先端部に沿って円柱の囲うバルコニーが壮観な旧第一銀行が見える。どちらももともとは1929年に建てられた古い建物で、移築、改修等を経て横浜市が推進する歴史的建造物を活用した文化芸術創造の実験プログラム 「BankART 1929」として再生、今や横浜における芸術の中心地の一つである。(旧富士銀行は2004.12.31に終了。)折り返して、今度は横浜港に向かって馬車道を下る。暫く歩を進めると左手に横浜第二合同庁舎が見えてくる。この建物も1926年設立の古いもので、かつては貿易の街横浜ならでは、生糸検査所であった。煉瓦の赤とコンクリートの白がリズミカルに配された様子を楽しみながらさらに進めば、やがて万国橋に突き当たる。明治初期に埋め立てられた島、新港町に架かるこの橋まで来れば、途端に視界が開け、海風が吹き荒ぶ港の風景に飛び込む事になる。右手前方に明治末期から大正初期にかけて建設され、長らく横浜港の物流拠点であった赤レンガ倉庫がどっしりと構えている。またその反対側ではクィーンとの愛称で親しまれ、緑色のイスラム風ドームが特徴的な横浜税関が優美に佇む。左に視線を向け、みなとみらい方面を眺めてみよう。そこには現代になってから作られ、横浜の夜景として馴染みの深いランドマークタワーや大観覧車、インターコンチネンタルホテル等が見える。夜になればそれらのライトアップが水面に映り、さらに格別な表情を浮かべる。そう、ほんの数百メートルの道のりを歩くだけで気付く事だろう。この街は新しさと古さが混在し、絶えず過去と未来の鬩ぎ合いの只中にある事を。

   少し寄り道が過ぎたかもしれない。いよいよHANA-YAの戸を叩いてみよう。白い壁面に、床とテーブル・椅子は渋い栗皮色、ふかふかとしたベージュと赤のひざ掛けが各席にかけられ、室内は落ち着いた、しかし温かい雰囲気だ。先ず目に飛び込んでくるのは、3つの壁に細く飾られている大橋渉作≪パンな気分≫。全粒粉パンのどこか無骨な表情を支持体とし、細かい黒胡麻で横浜の風景を描く。橋の架かる港の風景、人々が行きかう街、海鳥が飛び、煙を揚げて進む船のある港、これら全てがパンに一つ一つ埋め込まれた胡麻の描線で表現され、カフェに居ながらにして横浜を一望に収める事ができる。「もう、設計をやめてパン屋さんになりたい…」、どこか絵本に出てくるパン屋さんの様な優しげな表情をした大橋さんはそう話しながら「この作品は災害時には緊急食料となる」と冗談とも本気とも取れる発言をしながら悪戯っぽく笑う。

大橋さん

奥に進もう。池田雪絵+斉藤理の≪dessert d'archi 建築をかじってみよう≫がその一角に繰り広げられている。手前に見えるのが普段は設計の仕事に就く池田雪絵さんの作品である。DVD映像の中に収められた作品は、それぞれ“浮遊する”、“貫入する”等の建築構造上のキーワードをテーマにしたものだ。
一角

その中でも実物が展示されているのは写真にある作品≪浮遊する≫。一見すると揚げた細いパスタが重いチョコレートの塊を支えているように見えるが、実はこのチョコレート、重量のほとんど無い麩菓子をハチミツとココアでコーティングした物で、コンクリートが奇妙に浮遊する建築を見事に表現している。
池田さん

その奥には建築史の研究者である斉藤理さんの作品が続く。赤いテーブルクロスに横浜の歴史的建造物をテーマとした8皿のお菓子が並ぶ。一番手前にあるのが≪BankART 1929≫。コンクリート壁を胡麻で表現し、特徴的な円柱はチョコレートの蝋燭で表した。
BA

その隣は1931年竣工の三井住友銀行横浜支店のイオニア式の円柱を模した≪ionia≫。イオニア式の目印となる柱頭の渦巻きを乾燥キウイで、卵子形の列をかぼちゃの種で表現した。
ioni

その反対側にあるのが≪ベーリックホール≫。クッキー2枚1組であるこの作品、レモンピールの上にチョコレートの渦巻きが描かれたクッキーは、黄色い壁と館内の階段や窓等にところどころ施された渦巻形の装飾を、もう片方のクッキーは市松模様の床とそこに敷かれた赤い絨毯をそれぞれ表現している。
ベーリック


資料

山手資料館

Jack

横浜開港記念館≪jack≫

郵船

日本郵船歴史博物館

どれもこれも色彩豊かに纏められ、夢とロマンに満ち溢れているけれども、一方で建築に対する適確な判断に基づき表現され、よく観察していると、テーマとされた建物の新たな魅力に気付かされる。
8皿

花々で美しく飾り立てられた計8皿の建築お菓子

   「私達の制作の方向性は全く異なる。」と池田さんは聡明な瞳をこちらに向けそうつぶやく。「斉藤さんは過去の建築をモチーフとしているけれども、私はそれとは違ってもっと作り出すことに興味がある。」
   過去を見つめる研究者と未来を仰ぐ建築家が織り成したこのカフェの一角、そういえば横浜の街とどこか似ている。(編集局/川野)

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【025】にっぽんmuseum企画イベントnews

にっぽんmuseum企画イベントを2つお知らせします。
どうぞ奮って御参加下さい。

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☆★イベントnews 1★☆
《建築はお菓子である~パティシエ界のパラディオ、
A.カレームを読む~》


▼「食と現代美術part2- 美食同源」展(BankART1929) 
関連プログラム
《建築はお菓子である~パティシエ界のパラディオ、
A.カレームを読む~》

18世紀から19世紀にかけてフランスで活躍した宮廷料理人、
カレーム(1784~1833)。
建築書を研究し、その造形を積極的に料理に採り入れたこと
で知られ、「パティシエ界のパラディオ」とまで言われました。

今回、彼の生涯についてまとめた

イアン・ケリー著『宮廷料理人アントナン・カレーム』
(村上彩訳・ランダムハウス講談社・2005/
Ian Kelly, "Cooking for Kings", 2003)
の一部を朗読で愉しみたいと思います。

また、カレームが残したレシピの中から、1829年、パリ・ロス
チャイルドの邸で、紀行作家レディ・モルガンに供したという
「ネクタリンのプロンピエール」(予定)を再現し、これを皆さまと
ともに味わってみたいと思います。どうぞ、ゆったりと寛ろぎな
がらテキストの世界をお愉しみください。

日時:3月11日 (土) 17時半~18時半
会費・資料代:500円 (カレームのレシピによるお菓子付き)
朗読者: 杉並勢津子

会場:HANA-YA (喫茶店)
横浜市中区海岸通4-20-2 第2国際ビル1F
電話045-664-4715
横浜みなとみらい線「馬車道駅」6出口 徒歩4分
要予約:申し込み先着30名
申し込み方法:「朗読会参加希望」と明記の上、ご来場の方の氏名、
住所 、電話番号をinfo@ art-thinktank.com までお知らせ下さい。
▼「食と現代美術part2- 美食同源」
展覧会名:食と現代美術part 2- 美食同源
出品作家:折元立身、謝琳、須田悦弘、生意気、鬼頭健吾、大橋渉、
池田雪絵+斉藤理ほか
日時:2006 年2 月24 日(金)~3 月14 日(火) 11:30-19:00
会場:BankART Studio NYK BankART1929 Yokohama
BankART 周辺地区の店舗
入場料:前売り¥500 当日¥700
主催:BankART1929

はなやさん

会場のカフェHANA-YA
お菓子テーブル2

横浜の建築をモチーフにしたお菓子
カレーム2

カレームが制作したお菓子のイラスト


☆★イベントnews ★☆
《五十嵐太郎さんのトーク<アートの鍵>公開収録》


毎回お楽しみいただいています、
「~Les Clefs d'Art=アートの鍵~ 五十嵐太郎編」の
第二回公開録音イベントを開催します。
どうぞ、お茶を飲みながら、内容の濃いトークをお楽しみください。

・日時:2006年3月19日(日) 18時~20時
・講師:五十嵐太郎(東北大学助教授/建築史家)
・主催:にっぽんmuseum
・会場:「foo」 〒106-0044 東京都港区東麻布2-28-6
http://foo-azabu.jp/archives/000008.html
・概要:五十嵐太郎さんのトークイベントです(「アートの鍵」(2本     分)の公開収録)。
・定員:30名
・入場料:1,500円 (ワンドリンク+建築お菓子付き)
・申し込み方法:来場される方の●氏名(2名様まで)、代表者の●郵便番号、●住所、●電話番号を明記のうえ、下記宛て先までメールで送信してください。折り返し整理番号をお知らせします。応募多数の場合は抽選とさせていただきます。
・申し込み締切り:2006年3月17日(金)
・申込み/問合わせ: にっぽんmuseum事務局(担当:川野)
           info@art-thinktank.com


ノート

前回の公開録音の様子

テーマ:建築 - ジャンル:学問・文化・芸術

【024】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.2

今週は2月18日(土)、エコロジカルショップ&カフェ Bears Wellにて行われた
「旅のしずく VOL.3 MEET AIDS ORPHANS ~HIV/AIDS、アフリカで日本で
私たちにできること~」 についてイベントスタッフ石岡享子さんに報告レポートを
ご寄稿頂きました。


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旅のしずくvol.3 MEET AIDS ORPHANS
開催日:2006年2月18日 土曜日
18:00~21:30
会場:ECOLOGICAL SHOP & CAFE Bears Well
(目黒区)

リアリティーとイマジネーション、その力によって変えられる世界があるとしたら。

世界各地でのボランティアを派遣、活動するNGO NICEと、自分たちの生活からできることをしていこう、そして新たな価値観の社会をつくるビジネスを生み出そうというSLOW BUSINESS SCHOOLが協力して開催するイベント「旅のしずく」。目黒区・学芸大学のカフェBEARS WELLを借切って、世界各地のリアルな現状を伝えると同時に、食、音楽など、全身でその土地土地を感じ、遠く広い世界の地を想う。

今回はアフリカのエイズ孤児といういくらか重いテーマではあったが、身近でできることとしてレッドリボンに触れ、実際のウガンダのエイズ孤児たちとの出会いについてのトークライブ、そしてアフリカの食と音楽を楽しむカフェラウンジという時間を通して、参加者全員が一つの時間、想いを共有することとなった。

この日本の東京という地で、どれだけ遠いアフリカに想いを馳せられるだろうか。少なくとも、ここでこの日目にしたエイズ孤児たちは同じ空の下で生きている事、そして映像や画像は映像や画像でしかないこと、実体験の大きさを感じられたとしたら、それだけでも価値のある時間と言える。またそこから如何にイマジネーションを喚起させ、少しでも痛みや喜びを遠い彼の地の人々と共有できるか。さらには何かをするために立ち上がる力と知恵を生み出す事ができるか。

医学生、ろうそく職人、デザイナー、看護師、OL、学生、NGOスタッフ、そしてカフェ、様々なバックグラウンドを持つスタッフがアフリカで繋がり、それぞれの知識を出し合い、アフリカ、そして社会のために今、自分たちにできることを考えていく。その力を感じ、想いを来場者全員と共有する優しい夜となった。(石岡享子/イベントスタッフ・デザイナー)


b.dancing1

b.dancing[2].

みつろう

エイズ理解の象徴、レッドリボンみつろう

みつろうつくり

石油を使わない、地球に優しいみつろうそくで
レッドリボンみつろうキャンドルを制作

テーマ:NGO・NPO・社会運動にご協力を! - ジャンル:福祉・ボランティア

【023】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Mar.1

BankART で始まった展覧会「食と現代美術part2- 美食同源」への出展企画として、
2月25日(土)に催された≪晩餐会 矢継ぎ早なドラマ≫【EAT&ART TARO(料理)、
住中浩史(空間演出/にっぽんmuseumアカデミー会員)、水内貴英(陶器/にっぽんmuseumアカデミー会員)】 のレポートをお届けします。

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人一人がようやく通る事の出来る狭い階段を上がり、会場に足を一歩踏み入れる。途端に軽い眩暈に襲われる。高い高い天井、壁の気配が感じられない広い空間、そして暗闇。視線を空間の中にしっかりと定める事ができない。ただ、消え入りそうな光を灯し、暗闇の中でぽっかりと浮かびあがった30席の白い長テーブルが目に飛び込んでくる。十数メートルにも渡る晩餐会テーブルは整然と設えられてはいるけれども、巨大な暗闇に飲み込まれ、まるで宇宙の中で浮遊しているようにさえ見える。空間につなぎ止める術を断たれたまま不安定な足取りでテーブルに近づき、席に着く。一夜限りのアート晩餐会の始まりである。

テーブル

 目に映るのは皿だけを照らし出す微かな光のみ。会話さえ禁じられ、後は差し出される料理と対話する他無い。約10センチ四方のカラープレートにのせられた料理が次々と運ばれる。一プレートはそれぞれ皆2,3口大ではあるけれども、参加者はそれらをナイフとフォークで注意深く刻み、口に運び、食べ終わった途端それらは直ちに下げられ次の一品が運ばれる。その繰り返しである。食前酒の後、一かけらのチーズに始まり、時折ワインの休憩を置きながら、ゼラチンで覆われた豚肉、カブの煮物、ゴマペーストの塗られた焼き魚、鰹節をまぶしたぜんまい、三味寿司、オレンジ・ゼリー、フルーツ・タルト…文字通り≪矢継ぎ早な≫皿たち。
B料理2

B料理1

 おそらくどの来場者にとってもこれ程までに鋭敏な感覚でもって食す事は極めて稀な体験だろう。限定された環境の中、十分に味わう事に加えて、通常のコース料理と異なり出される料理に一定の規則が無い為、次に何が運ばれてくるのか探り予想する、あるいは皿の連続に何らかの物語を付与する等して晩餐会を過ごした者も少なからず居たはずである。「食と現代美術part2- 美食同源」への出展企画として催された≪晩餐会 矢継ぎ早なドラマ≫、それは来場者それぞれの胸にそれぞれのドラマを作り出したに違いない。(編集局/川野)

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