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【055】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」Aug.24
先日、古い資料の整理をしていたら、書棚から一冊のアルバムが落ちてきた。バタッと開かれたページに張ってあった写真は「小石川消防署大塚出張所」(昭和6年造)をとらえた数枚だった。
既に取り壊されてしまった建物で、かつて春日通りと不忍通りの交差点にあった。

小石川消防署大塚出張所
私が撮影したのは、ちょうど内部の解体作業が始まった頃だった。作業をしていた方に色々御話を伺っているうち、中を見せてもらえることになり、瓦礫の山を分け入ってこの建物の最後の姿をファインダーに収めていったのだ。
もっとも印象的なポイントは望楼だった。市中に火災が無いかを確認するためのタワーだ。ここのは、銅葺きの屋根を持った異国風スタイルの塔だった。
塔屋の中は薄暗かった。人ひとりやっと通れる幅の階段を、頭上からわずかに挿し込む外光だけを頼りに、やや不安な心持で一歩一歩上った記憶が私の中で鮮やかに思い出された。

小石川消防署大塚出張所
一冊のアルバムは図らずも私をちょっとしたタイムトリップへと誘った。次のページをめくってみる。「大塚女子アパート」(昭和5年造)だ。これもまた、もう見ることのできない建物である。表面に傷をつけたスクラッチタイルの帯に特徴がある表現主義スタイルの外観を持っていた。
春日通りに面した一階部分には、小さなパン屋、ラーメン屋、雑貨店などが軒を連ねていて、これらの中に足を踏み入れると、何だか暗くずっしりと重たい雰囲気が漂っていたのをよく覚えている。
近年の建物にないもの。そのひとつにこうした「薄暗さ」が挙げられるのかも知れない。タイルや塗り壁の自然に風化した様、頭を押さえつけてくるような低い天井、そして薄暗い中を時に崇高な表情を持ってさまよう陽光。無論、こうした環境は決して不快ではなく、コントラストの効いた濃厚な空間体験を私たちに与えてくれていた。

大塚女子アパート
先日訪れた新富町の「喜久屋ビル」(昭和3年造)にもやはり同様の薄暗さが漂っていたことを思い出す。建物正面のガラス戸を押し中へ入ると、薄暗い中から、45度は傾斜があろうかという急な階段がまるで壁のように迫ってくるのだ。
残念なことだが、この建物はまもなく取り壊されるのだという。また私たちの眼前から「薄暗い」空間がなくなろうとしている。

大塚女子アパート
(編集局:斉藤)
既に取り壊されてしまった建物で、かつて春日通りと不忍通りの交差点にあった。

小石川消防署大塚出張所
私が撮影したのは、ちょうど内部の解体作業が始まった頃だった。作業をしていた方に色々御話を伺っているうち、中を見せてもらえることになり、瓦礫の山を分け入ってこの建物の最後の姿をファインダーに収めていったのだ。
もっとも印象的なポイントは望楼だった。市中に火災が無いかを確認するためのタワーだ。ここのは、銅葺きの屋根を持った異国風スタイルの塔だった。
塔屋の中は薄暗かった。人ひとりやっと通れる幅の階段を、頭上からわずかに挿し込む外光だけを頼りに、やや不安な心持で一歩一歩上った記憶が私の中で鮮やかに思い出された。

小石川消防署大塚出張所
一冊のアルバムは図らずも私をちょっとしたタイムトリップへと誘った。次のページをめくってみる。「大塚女子アパート」(昭和5年造)だ。これもまた、もう見ることのできない建物である。表面に傷をつけたスクラッチタイルの帯に特徴がある表現主義スタイルの外観を持っていた。
春日通りに面した一階部分には、小さなパン屋、ラーメン屋、雑貨店などが軒を連ねていて、これらの中に足を踏み入れると、何だか暗くずっしりと重たい雰囲気が漂っていたのをよく覚えている。
近年の建物にないもの。そのひとつにこうした「薄暗さ」が挙げられるのかも知れない。タイルや塗り壁の自然に風化した様、頭を押さえつけてくるような低い天井、そして薄暗い中を時に崇高な表情を持ってさまよう陽光。無論、こうした環境は決して不快ではなく、コントラストの効いた濃厚な空間体験を私たちに与えてくれていた。

大塚女子アパート
先日訪れた新富町の「喜久屋ビル」(昭和3年造)にもやはり同様の薄暗さが漂っていたことを思い出す。建物正面のガラス戸を押し中へ入ると、薄暗い中から、45度は傾斜があろうかという急な階段がまるで壁のように迫ってくるのだ。
残念なことだが、この建物はまもなく取り壊されるのだという。また私たちの眼前から「薄暗い」空間がなくなろうとしている。

大塚女子アパート
(編集局:斉藤)
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【050】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.3
3週にわたった小笠原真美さんによる横浜・根岸の邸宅でのイヴェントレポート、今週でいよいよ完結です。
過去の記事はこちら→
【048】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.1 【050】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.2
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今回は番外編として柳下邸のある根岸周辺の様相などについて書いてみます。
古くから根岸一帯は、根岸湾に面した風光明媚な地であった。最近そのことを知る機会を得た。
一つは6月で営業を終えた横浜プリンスホテル(磯子駅)での「グランドフィナーレ写真展」であり、もう一つは根岸にある、各地の古建築を集めた庭園、三渓園での「開園100周年記念野外写真展昔むかし」からである。2つの写真展で明治時代から昭和40年代までの美しかった、この地に集う楽しげな人たちの姿を見た。
過去の記事はこちら→
【048】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.1 【050】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.2
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今回は番外編として柳下邸のある根岸周辺の様相などについて書いてみます。
古くから根岸一帯は、根岸湾に面した風光明媚な地であった。最近そのことを知る機会を得た。
一つは6月で営業を終えた横浜プリンスホテル(磯子駅)での「グランドフィナーレ写真展」であり、もう一つは根岸にある、各地の古建築を集めた庭園、三渓園での「開園100周年記念野外写真展昔むかし」からである。2つの写真展で明治時代から昭和40年代までの美しかった、この地に集う楽しげな人たちの姿を見た。
【053】日経で報道! 建築お菓子創作講座
「にっぽんmuseum」主催で
7月17日に行った「建築お菓子創作講座」の模様が、本日、日本経済新聞夕刊紙上にて紹介されましたのでお知らせいたします。どうぞご確認下さい。
本文は8月8日付け日経夕刊の18面で7段抜き。
以下のサイトはダイジェストのみ▼:
http://www.nikkei.co.jp/honshi/yukan/


■第1回お菓子講座講師、池田雪絵さんのプロフィールをご紹介いたします。
池田雪絵(いけだゆきえ)/池田雪絵建築設計事務所 一級建築士事務所
東京大学建築学科卒業後、ヘルシンキ工科大学(Finland)交換留学、
東京大学大学院修士課程修了。
坂茂建築設計、東京芸大非常勤講師、studio Archi Farmを経て
2004年池田雪絵建築設計事務所 一級建築士事務所設立。
2000年ヨーロッパ巡回展覧会[PARASITE]出展、
2005年日韓友情年交流展[未来は今日から]@韓国出展、
2006年BankART1929[食と現代美術part2]出展等。
池田雪絵さんへのお問い合わせはにっぽんmuseumまで御連絡ください。
にっぽんmuseum事務局 info@art-thinktank.com
7月17日に行った「建築お菓子創作講座」の模様が、本日、日本経済新聞夕刊紙上にて紹介されましたのでお知らせいたします。どうぞご確認下さい。
本文は8月8日付け日経夕刊の18面で7段抜き。
以下のサイトはダイジェストのみ▼:
http://www.nikkei.co.jp/honshi/yukan/


■第1回お菓子講座講師、池田雪絵さんのプロフィールをご紹介いたします。
池田雪絵(いけだゆきえ)/池田雪絵建築設計事務所 一級建築士事務所
東京大学建築学科卒業後、ヘルシンキ工科大学(Finland)交換留学、
東京大学大学院修士課程修了。
坂茂建築設計、東京芸大非常勤講師、studio Archi Farmを経て
2004年池田雪絵建築設計事務所 一級建築士事務所設立。
2000年ヨーロッパ巡回展覧会[PARASITE]出展、
2005年日韓友情年交流展[未来は今日から]@韓国出展、
2006年BankART1929[食と現代美術part2]出展等。
池田雪絵さんへのお問い合わせはにっぽんmuseumまで御連絡ください。
にっぽんmuseum事務局 info@art-thinktank.com
【052】にっぽんmuseumアート・アカデミー後期講座
にっぽんmuseum事務局では、アート・アカデミー後期講座開講にむけて
準備を進めています。
前期に引き続き、9月より
●建築写真講座
●地域ソムリエ講座
●建築お菓子講座
来年1月より
●子供向け絵本創作講座
を開講する予定です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
前期は、「子供向け絵本創作講座」、「地域ソムリエ育成プログラム」、「街の魅力を発見する写真講座」、そして「建築お菓子講座」を実施しました。全てがはじめての試み。おかげさまで、すべてに好評をいただきました。
「有意義な機会だった。」「新しい発見だった」こうした感想を聞くと、企画したものとしては非常に励みになるます。そうした声に背中を押していただきつつ、後期も各種講座を開催していく予定です。お楽しみに。現在の調整状況をお知らせすると:
・下村純一先生を講師とする建築写真講座では、新富町の旧全国石油会館ビルを被写体に3回シリーズのレクチャーを実施する予定。昭和初期に建てられ、スクラッチタイル張りでスマートな建物です。
8月下旬ないし9月上旬スタートを予定している。 当初は9月3日スタートの予定でしたが、建物そのものの行く末が定かではなく、ひょっとして解体されることも考えられるので前倒しで考えています。
・建築お菓子講座は、次回「東京国際フォーラムをお菓子にしてしまおう」という企画を予定。今回は2回シリーズで、初回は現地を実際に見学し、建物についての解説を聴く。2回目に調理室にて皆で制作。
9月下旬に見学、10月7日(土)に調理、という日程で調整中。どうぞお楽しみに。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なお、講座開講情報をメールにてお受けになりたい方は、
e-mail : info@art-thinktank.com にっぽんmuseum事務局
までお問い合わせください。
お待ちしております。
準備を進めています。
前期に引き続き、9月より
●建築写真講座
●地域ソムリエ講座
●建築お菓子講座
来年1月より
●子供向け絵本創作講座
を開講する予定です。
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前期は、「子供向け絵本創作講座」、「地域ソムリエ育成プログラム」、「街の魅力を発見する写真講座」、そして「建築お菓子講座」を実施しました。全てがはじめての試み。おかげさまで、すべてに好評をいただきました。
「有意義な機会だった。」「新しい発見だった」こうした感想を聞くと、企画したものとしては非常に励みになるます。そうした声に背中を押していただきつつ、後期も各種講座を開催していく予定です。お楽しみに。現在の調整状況をお知らせすると:
・下村純一先生を講師とする建築写真講座では、新富町の旧全国石油会館ビルを被写体に3回シリーズのレクチャーを実施する予定。昭和初期に建てられ、スクラッチタイル張りでスマートな建物です。
8月下旬ないし9月上旬スタートを予定している。 当初は9月3日スタートの予定でしたが、建物そのものの行く末が定かではなく、ひょっとして解体されることも考えられるので前倒しで考えています。
・建築お菓子講座は、次回「東京国際フォーラムをお菓子にしてしまおう」という企画を予定。今回は2回シリーズで、初回は現地を実際に見学し、建物についての解説を聴く。2回目に調理室にて皆で制作。
9月下旬に見学、10月7日(土)に調理、という日程で調整中。どうぞお楽しみに。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なお、講座開講情報をメールにてお受けになりたい方は、
e-mail : info@art-thinktank.com にっぽんmuseum事務局
までお問い合わせください。
お待ちしております。
【050】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.2
先週に引き続き、小笠原真美さんによる横浜・根岸の邸宅でのイヴェントレポートをお届けします。
先週の記事はこちら→【048】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
☆ 柳下邸の建物と意匠

柳下邸の設計者は不明である。関東大震災、戦争、ともに大きな被害に合わず持ちこたえた。公開にあたり、出来る限り創建時代の姿にと、文化財改修に携わった職人さんたちの手によって改修された。職人さんの弁で「古い家には、その家をつくった人や守ってきた人の思いや気持ちが宿っていて、丁寧に直していると、ふっと、それを感じる時がある」とあるが、この家のそれぞれの部屋で、また置かれた古い調度品を見ても「丁寧に使ってきた家だなあ」と感じる。

木の良さが味わえる家でもある。格子の引き戸、明かり欄間、書院窓、網代天井など。自然木を活かし物を掛けるなど、実用にしているものもある。屋根はフランス瓦であるが、これは日本では横浜発祥の水はけの良いと言われる瓦である。地元発祥のものを使っているのが嬉しい。

圧巻は浴室。最も美とは遠いと思える場所であるのに最も美しい場所とも言える。浴室天井は格天井で、水分が滴りにくい構造になっている。また換気を兼ねた透かし彫りが施されている。みごとな美と実用の融合である。


いろいろな調度品も面白い。客用玄関に置かれた木製の立ち火鉢。これは、見た目も良く、客を大事にする心が表れている。そのほか桐の火鉢や装飾的なオルガンなど、見るべきものが邸内に溢れている。
☆ 豊かな気持ちになれる場所
また柳下邸ではスタッフの人々が素晴らしい。にこやかな顔で、庭木に水をやる姿は、まさしく自分の家に対するそれである。お客さんが少ない時には、いろいろお話を伺うことも出来る。その話しぶりも、この家が大好きで誇りに思っていることが感じられる。ここには好きなだけいることが出来、またスタッフの人々の雰囲気からも、こちらも見学というより、親戚の家にでも来たような気持ちになってしまう。
イベントのある、なしに関わらず、ここにいることで、ゆったりとした時と、目の贅沢、心も身体も緩んでいく開放感が得られる。東京からも近く行きやすい場所だ。出かけてみてはいかがだろうか。

【来週に続く・・・】
(小笠原真美/パフォーマンス・アーティスト)
先週の記事はこちら→【048】精緻で美しい大正時代の邸宅「旧柳下邸」vol.1
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☆ 柳下邸の建物と意匠

柳下邸の設計者は不明である。関東大震災、戦争、ともに大きな被害に合わず持ちこたえた。公開にあたり、出来る限り創建時代の姿にと、文化財改修に携わった職人さんたちの手によって改修された。職人さんの弁で「古い家には、その家をつくった人や守ってきた人の思いや気持ちが宿っていて、丁寧に直していると、ふっと、それを感じる時がある」とあるが、この家のそれぞれの部屋で、また置かれた古い調度品を見ても「丁寧に使ってきた家だなあ」と感じる。

木の良さが味わえる家でもある。格子の引き戸、明かり欄間、書院窓、網代天井など。自然木を活かし物を掛けるなど、実用にしているものもある。屋根はフランス瓦であるが、これは日本では横浜発祥の水はけの良いと言われる瓦である。地元発祥のものを使っているのが嬉しい。

圧巻は浴室。最も美とは遠いと思える場所であるのに最も美しい場所とも言える。浴室天井は格天井で、水分が滴りにくい構造になっている。また換気を兼ねた透かし彫りが施されている。みごとな美と実用の融合である。


いろいろな調度品も面白い。客用玄関に置かれた木製の立ち火鉢。これは、見た目も良く、客を大事にする心が表れている。そのほか桐の火鉢や装飾的なオルガンなど、見るべきものが邸内に溢れている。
☆ 豊かな気持ちになれる場所
また柳下邸ではスタッフの人々が素晴らしい。にこやかな顔で、庭木に水をやる姿は、まさしく自分の家に対するそれである。お客さんが少ない時には、いろいろお話を伺うことも出来る。その話しぶりも、この家が大好きで誇りに思っていることが感じられる。ここには好きなだけいることが出来、またスタッフの人々の雰囲気からも、こちらも見学というより、親戚の家にでも来たような気持ちになってしまう。
イベントのある、なしに関わらず、ここにいることで、ゆったりとした時と、目の贅沢、心も身体も緩んでいく開放感が得られる。東京からも近く行きやすい場所だ。出かけてみてはいかがだろうか。

【来週に続く・・・】
(小笠原真美/パフォーマンス・アーティスト)
【049】丹青社のHPをチェックしてみてください
先日行った<にっぽんmuseum>の年次総会+講演会について:
丹青社企画広報室の柳原さんの御計らいで、HP上にて
ご紹介いただきました。
参加された方も、できなかった方もどうぞご覧下さい。
http://tansei.net/shisetsu/nipponmu/index.htm
丹青社企画広報室の柳原さんの御計らいで、HP上にて
ご紹介いただきました。
参加された方も、できなかった方もどうぞご覧下さい。
http://tansei.net/shisetsu/nipponmu/index.htm