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【026】展覧会日記 Mar.8 臨時号

3月11日 (土) に行われるイベント《建築はお菓子である~
パティシエ界のパラディオ、A.カレームを読む~》の会場
カフェHANA-YAにて行われている展覧会をレポートします。
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   横浜・馬車道通り、関内から横浜港に通じるこの数百メートルの通りを道形に歩き、海岸通りを右折すると、白と黄色の色彩をまとい、来る人を温かい表情で迎える一軒の小さなカフェ、HANA-YAが見える。2月24日から始まった「食と現代美術part2- 美食同源」(横浜BankART)展に出品している大橋渉 、池田雪絵+斉藤理の作品展示会場だ。本業を建築関連とする彼らが食材でいったいどの様なアートを紡ぎ出したのか…と逸る気持ちを抑えつつ、先ずは馬車道界隈を散歩してみよう。

   馬車道駅6番出口の階段を駆け上がりそのまま本町通りと馬車道通りが交差する本町四丁目交差点に臨む。正面には粗く削り出された石積みと滑らかに磨かれた円柱との対比が印象的な旧富士銀行が、右手には細長い三角形をした敷地の先端部に沿って円柱の囲うバルコニーが壮観な旧第一銀行が見える。どちらももともとは1929年に建てられた古い建物で、移築、改修等を経て横浜市が推進する歴史的建造物を活用した文化芸術創造の実験プログラム 「BankART 1929」として再生、今や横浜における芸術の中心地の一つである。(旧富士銀行は2004.12.31に終了。)折り返して、今度は横浜港に向かって馬車道を下る。暫く歩を進めると左手に横浜第二合同庁舎が見えてくる。この建物も1926年設立の古いもので、かつては貿易の街横浜ならでは、生糸検査所であった。煉瓦の赤とコンクリートの白がリズミカルに配された様子を楽しみながらさらに進めば、やがて万国橋に突き当たる。明治初期に埋め立てられた島、新港町に架かるこの橋まで来れば、途端に視界が開け、海風が吹き荒ぶ港の風景に飛び込む事になる。右手前方に明治末期から大正初期にかけて建設され、長らく横浜港の物流拠点であった赤レンガ倉庫がどっしりと構えている。またその反対側ではクィーンとの愛称で親しまれ、緑色のイスラム風ドームが特徴的な横浜税関が優美に佇む。左に視線を向け、みなとみらい方面を眺めてみよう。そこには現代になってから作られ、横浜の夜景として馴染みの深いランドマークタワーや大観覧車、インターコンチネンタルホテル等が見える。夜になればそれらのライトアップが水面に映り、さらに格別な表情を浮かべる。そう、ほんの数百メートルの道のりを歩くだけで気付く事だろう。この街は新しさと古さが混在し、絶えず過去と未来の鬩ぎ合いの只中にある事を。

   少し寄り道が過ぎたかもしれない。いよいよHANA-YAの戸を叩いてみよう。白い壁面に、床とテーブル・椅子は渋い栗皮色、ふかふかとしたベージュと赤のひざ掛けが各席にかけられ、室内は落ち着いた、しかし温かい雰囲気だ。先ず目に飛び込んでくるのは、3つの壁に細く飾られている大橋渉作≪パンな気分≫。全粒粉パンのどこか無骨な表情を支持体とし、細かい黒胡麻で横浜の風景を描く。橋の架かる港の風景、人々が行きかう街、海鳥が飛び、煙を揚げて進む船のある港、これら全てがパンに一つ一つ埋め込まれた胡麻の描線で表現され、カフェに居ながらにして横浜を一望に収める事ができる。「もう、設計をやめてパン屋さんになりたい…」、どこか絵本に出てくるパン屋さんの様な優しげな表情をした大橋さんはそう話しながら「この作品は災害時には緊急食料となる」と冗談とも本気とも取れる発言をしながら悪戯っぽく笑う。

大橋さん

奥に進もう。池田雪絵+斉藤理の≪dessert d'archi 建築をかじってみよう≫がその一角に繰り広げられている。手前に見えるのが普段は設計の仕事に就く池田雪絵さんの作品である。DVD映像の中に収められた作品は、それぞれ“浮遊する”、“貫入する”等の建築構造上のキーワードをテーマにしたものだ。
一角

その中でも実物が展示されているのは写真にある作品≪浮遊する≫。一見すると揚げた細いパスタが重いチョコレートの塊を支えているように見えるが、実はこのチョコレート、重量のほとんど無い麩菓子をハチミツとココアでコーティングした物で、コンクリートが奇妙に浮遊する建築を見事に表現している。
池田さん

その奥には建築史の研究者である斉藤理さんの作品が続く。赤いテーブルクロスに横浜の歴史的建造物をテーマとした8皿のお菓子が並ぶ。一番手前にあるのが≪BankART 1929≫。コンクリート壁を胡麻で表現し、特徴的な円柱はチョコレートの蝋燭で表した。
BA

その隣は1931年竣工の三井住友銀行横浜支店のイオニア式の円柱を模した≪ionia≫。イオニア式の目印となる柱頭の渦巻きを乾燥キウイで、卵子形の列をかぼちゃの種で表現した。
ioni

その反対側にあるのが≪ベーリックホール≫。クッキー2枚1組であるこの作品、レモンピールの上にチョコレートの渦巻きが描かれたクッキーは、黄色い壁と館内の階段や窓等にところどころ施された渦巻形の装飾を、もう片方のクッキーは市松模様の床とそこに敷かれた赤い絨毯をそれぞれ表現している。
ベーリック


資料

山手資料館

Jack

横浜開港記念館≪jack≫

郵船

日本郵船歴史博物館

どれもこれも色彩豊かに纏められ、夢とロマンに満ち溢れているけれども、一方で建築に対する適確な判断に基づき表現され、よく観察していると、テーマとされた建物の新たな魅力に気付かされる。
8皿

花々で美しく飾り立てられた計8皿の建築お菓子

   「私達の制作の方向性は全く異なる。」と池田さんは聡明な瞳をこちらに向けそうつぶやく。「斉藤さんは過去の建築をモチーフとしているけれども、私はそれとは違ってもっと作り出すことに興味がある。」
   過去を見つめる研究者と未来を仰ぐ建築家が織り成したこのカフェの一角、そういえば横浜の街とどこか似ている。(編集局/川野)
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テーマ:美術館・博物館 展示めぐり。 - ジャンル:学問・文化・芸術

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