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【066】「Le journal de l'exposition=展覧会日記」July 13「青山二郎の眼」

「青山二郎の眼」展

IMG_0684.jpg IMG_0685.jpg 世田谷美術館で開催中の「青山二郎の眼」展。
昨年秋にMIHOミュージアムで開幕し、愛媛県美術館、新潟市美術館と巡回していよいよ東京へ。

世田谷美術館HP
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
exhibition/exhibition.html

読売新聞社HP
http://info.yomiuri.co.jp/event
/01001/200702053407-1.htm


知っているようで実は良く分からない、というのが「青山二郎」という人物ではないでしょうか。骨董好きだからコレクター、或いは美術評論家ともいえるし、生涯に2000冊近い書籍の装幀を手掛けたことから装幀家ともいえるでしょう。しかし青山は生涯職業を持たず、「高等遊民」の姿勢を貫いたこと、しかしその「余技」がひとつの文化潮流になるほど高い水準にあったことが、この展覧会で浮き彫りになっています。白州正子が評するところの「何者でもない人生」であり、加藤唐九郎が言うところの「やろうと思えば何でもやれた天才なのにわざとなにもしなかった男」の生き様を知ることができます。

本展は4章立てになっており、第1章 鑑賞陶器?中国古陶磁、第2章 朝鮮考?李朝・朝鮮工芸、第3章 日本の骨董、第4章 装幀家 青山二郎とその交流と構成されています。青山二郎の美の全体像に迫ろうとする企画だけあって、青山が関わった古陶器の図録に掲載された作品、企画した展覧会に出品された作品が集められる他、手がけた書物の装丁や交流にいたる隅々まで目配りされています。
 14歳で骨董に目覚め、やがて骨董の専門家やコレクターに広く知られるようになった青山の展覧会だけあって、第1章から3章までは名品が並びます。日本民藝館所蔵の呉州赤絵が数点出品されており、色鮮やかな赤が目を引きます。また小説家の大岡昇平が後に「青山学院」と名付けたように、青山二郎の元には、文芸評論家の小林秀雄、河上徹太郎、小説家の永井龍雄、詩人の中原中也、随筆家の白洲正子らが集い文学論や骨董談義に花を咲かせていました。第4章では青山が手がけた、この文学サロンに出入りしていた作家の書物の装幀を見ることができます。青山の代表作である中原中也の『在りし日の歌』の装幀も展観されています。

書物の装幀も魅力的ですが、私が一番心惹かれたのは青山自身が文庫本を彩色したドエトフスキーの著作4冊。『罪と罰』(新潮文庫)、『白痴』(同)、『地下生活者の手記』(岩波文庫)、『未成年』(同)は、それぞれカバーが外され、直接水彩で模様が描かれているのですが、どれも繊細で愛らしく、見慣れているはずの文庫本が青山の手に掛かると実に魅力的に変貌を遂げるのに驚きました。
 意外だったのは青山が描いた油絵(板絵も含む)です。「私の画には曖昧な処がないと言つてもいい」(『素人画について』より)と本人も述べていますが、明快な青さが印象的です。

第4章の交友コーナーでは、洋画家の梅原龍三郎、陶芸家の浜田庄司、河井寛次郎、北大路魯山人らの作品が展示されています。今回は「青山二郎の眼」という展覧会タイトルですが、青山と彼らの関わりや、今だからこそ検証できる青山の同時代の作家に対する評価など、興味深いコーナーになっています。鉄斎の画、バーナード・リーチの香炉、黒田辰秋の漆器、、、。会場を一巡すると昭和の芸術において、青山二郎とその周辺はひとつの潮流となっていたことが伝わってきます。

例えば梅原龍三郎。梅原芸術と呼ばれるものは豪華絢爛、豪放磊落と形容されるように、華やかで重厚なイメージがあります。しかし青山は梅原の作品群に、副産物として生まれている「別に図案風な即興的な一連の諸作がある事に注意しなければなりません。」と、注意を喚起しています。「私はこの種の作品を梅原さんの「大津絵」と称んでゐますが、梅原さんの「大津絵」も昔の大津絵と同じ事で、画筆のたこから生まれた記念碑です。」と青山が述べるように、展示されている『梅原龍三郎小品画集』は素朴な即興的な絵が収録されています。梅原は大津絵や初期肉筆浮世絵に強い関心を持って蒐集し、自らの制作の糧にしており、これらの小品に目を向けた青山の眼の鋭さには驚かされます。
 この他『裸婦豹図』は梅原が描いた絵を元に、富本憲吉が陶板に仕上げた作品ですが、青山の周辺の人物同士の交友が伺われるのも興味深いところです。表紙カットを梅原が描き、装丁は青山二郎が担当した季刊「創元」の第一号も展示されています。内容は青山二郎の梅原論や、中原中也の未発表の詩、小林秀雄の「モツアルト」など、青山とその周辺の人々のコラボレーションといった趣です。

さて今回の図録は2冊組。図版編と解説編に分かれています。ざらりとした灰色の外箱の手触り、箱の内側は艶やかな黒に山月蒔絵文庫(本阿弥光悦作)がプリントされ、凝った作りになっています。背表紙は黒が配されていますが、冊子を引き出すと印象的な赤と青の表紙が目に飛び込んできます。まるで青山が愛した呉州赤絵のように、ソーダ釉のトルコブルーのように鮮やか。こうしたギャップの面白さは、実際に手にとってみないと伝わってこないものですから、ミュージアムショップではお見逃しなく!
IMG_0736.jpg IMG_0737.jpg


締めくくりに、図版編の最後のページに収録されている青山二郎の言葉をご紹介しましょう。

優れた画家が、美を描いたことはない。
優れた詩人が、美を歌つたことはない。
それは描くものではなく、
歌ひ得るものでもない。
美とは、それをみた者の発見である。
創作である。
『日本の陶器』より

まさに稀代の目利きとしての自負が感じられます。
会期は8月19日まで。緑豊かな砧公園に納涼がてらお出かけになるにもぴったりの展覧会だと思います。

【嶋田華子】
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